親が認知症になると口座は凍結される?その前にできる備え

親の終活サポート

親が認知症になると、口座は本当に凍結されるのでしょうか。結論から言うと、法律で自動的に凍結される仕組みはありません。ただ、銀行の窓口では「本人の意思確認ができない」という理由で、家族であってもお金を引き出しにくくなるのが実態です。この記事では、全国銀行協会が2021年に示した考え方と、今からできる備えをやさしく整理します。

なぜ「凍結」が起きるのか

親が認知症になると口座は凍結される?その前にできる備えのイメージイラスト
イメージ(AI生成)

銀行の預金は、法律上あくまで本人の財産です。家族であっても、本人に代わって勝手に引き出す権利はありません。銀行は預金を払い出すとき、本人の意思確認をするのが原則です。認知判断能力が低下すると、この意思確認ができなくなり、窓口で「本人確認ができないため対応できません」と言われるケースが出てきます。これが世間で「口座凍結」と呼ばれている状態です。銀行が積極的に口座を止めるというより、本人確認ができない取引に応じられなくなる、というイメージのほうが近いです。

全国銀行協会の考え方(2021年2月)

一般社団法人全国銀行協会は2021年2月18日、「金融取引の代理等に関する考え方」を公表しました。この中で、認知判断能力が低下した本人に代わって家族が預金を引き出す場面についての整理が示されています。

ポイントは次の3つです。ここだけ押さえておけば大丈夫です。

1つ目は、成年後見制度の利用を促すのが基本という位置づけであること。2つ目は、成年後見の手続きが間に合わない、あるいは制度を使っていない場合でも、医療費や施設入居費、生活費など「本人の利益になることが明らかな支払い」に限っては、家族からの依頼に応じることが考えられるとされていること。3つ目は、これはあくまで会員銀行の参考資料であり、対応を義務づけるものではないということです。実際にどう対応するかは、銀行ごと、支店ごとの判断に委ねられています。

一般的には、こうした「本人の利益が明らかな支払い」への対応は、家族が診断書や医療費の請求書などを示し、複数の行員が面談するといった手順を経て、慎重に判断されるとされています。あわてず、まずは口座のある銀行に相談してみることが遠回りに見えて近道です。

参考:全国銀行協会「金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方について」(2021年2月18日)

今からできる3つの備え

窓口の対応を待つより、判断能力があるうちに備えておくほうが、家族の負担はずっと軽くなります。代表的な選択肢を比較表にまとめました。

方法 始める時期 特徴
成年後見制度(法定後見) 判断能力が低下してから 家庭裁判所が後見人を選任。財産保護は手厚いが、家庭裁判所への定期報告など手続きの負担がある
任意後見制度 判断能力があるうちに契約 将来の後見人を自分で選んでおける。判断能力低下後に任意後見監督人が選任されて発効
家族信託 判断能力があるうちに契約 財産の管理を家族に託す仕組み。不動産の売却や資産の柔軟な運用がしやすいとされる
代理人届出(銀行の代理人カード等) 判断能力があるうちに届出 銀行ごとに用意された制度。日常の出し入れ程度に使いやすいが、対応は銀行により異なる

一般的には、判断能力があるうちに使える任意後見制度や家族信託、代理人届出のほうが、選べる幅が広いとされています。ただし、それぞれ向き不向きがあり、資産の内容や家族構成によって最適な組み合わせは変わります。個別のケースについては、司法書士や弁護士など専門家にご相談ください。

家族信託とは?認知症に備える仕組みをやさしくの記事で、家族信託の仕組みをくわしく解説しています。

お盆に帰省したら、まず「置き場所」だけでも

制度を選ぶ前の第一歩として、通帳や保険証券、印鑑がどこにあるかを親と共有しておくことも大切な備えです。いざというとき、口座を探すところから始めるのは大きな負担になります。中身まで踏み込む必要はありません。まずは「どこにあるか」だけを聞いておく、という軽い形で始めるのがおすすめです。

親の通帳・保険・印鑑、置き場所の聞き方|お盆にの記事で、聞き方の具体例を紹介しています。

よくある質問

Q. 認知症と診断されたら、すぐに口座は使えなくなりますか?
すぐに使えなくなるとは限りません。本人の判断能力の程度や銀行の対応によります。窓口で意思確認ができる状態であれば、通常どおり取引できる場合もあります。心配な場合は、早めに口座のある銀行へ相談しておくと安心です。

Q. 家族なら代わりに引き出せますか?
家族というだけでは、本人の預金を引き出す法的な権利はありません。全国銀行協会の考え方では、医療費など本人の利益が明らかな支払いに限って対応が検討される場合があるとされていますが、これは銀行ごとの判断であり、必ず応じてもらえるとは限りません。

Q. 何も備えていない場合はどうすればいいですか?
一般的には、まず口座のある銀行の窓口や、地域包括支援センターなど公的な相談窓口に相談することがすすめられています。状況によって成年後見制度の利用が案内されることもあります。個別の判断は専門家にご相談ください。

まとめ

認知症になったからといって、口座が自動的に凍結される法律上の仕組みはありません。ただ、意思確認ができなくなると、家族でも引き出しにくくなるのが現実です。全国銀行協会は医療費など本人の利益が明らかな支払いへの柔軟な対応を示していますが、これは義務ではなく、銀行ごとの判断に委ねられています。今からできる備えを、下のチェックリストで確認してみてください。

チェック項目 できていれば◯
通帳・保険・印鑑の置き場所を家族が把握している
任意後見・家族信託・代理人届出のいずれかを検討した
口座のある銀行に相談できる状態にしている